メダカの稚魚にはグリーンウォーターよりブラックウォーター?グラミー研究から考える
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「メダカの稚魚を育てるなら、グリーンウォーターが一番良い。」
メダカを飼育していると、このような情報を目にすることがあります。
一方で、観賞魚の稚魚を対象にした研究の中には、グリーンウォーターよりも、カタッパ葉抽出液によるブラックウォーターの方が良い生存・成長成績を示したものがあります。
その研究で対象になったのは、パールグラミーとブルーグラミーの稚魚です。
研究では、稚魚を次の3種類の水で育てました。
- 透明な飼育水
- クロレラを含むグリーンウォーター
- カタッパ葉抽出液を使ったブラックウォーター
10日間の飼育後、カタッパ葉抽出液区では、透明水区より約2倍、グリーンウォーター区より約30%多くの稚魚が生き残りました。
さらに、カタッパ葉抽出液区では比成長率も高くなりました。
この結果だけを見ると、
「稚魚育成では、グリーンウォーターよりブラックウォーターの方が良いのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、この研究結果をそのままメダカへ当てはめることはできません。
研究対象はメダカではなくグラミーです。また、研究で使われたグリーンウォーターは、家庭の屋外容器で自然にできた青水と同じようなものであるが、細かく数値を見る全く同じものではないので、留意してください。
この記事では、グラミー研究の条件と結果を詳しく確認しながら、次の点を分けて考えます。
- 研究で実際に確認されたこと
- 研究者が考察した理由
- 研究だけでは分からないこと
- メダカの稚魚育成へ応用できる可能性
- グリーンウォーターよりブラックウォーターが良いと断定できない理由
- マジックリーフティーバッグを使って試す場合の位置づけ
結論:グラミーではブラックウォーター区が良かったが、メダカでも優れているとはまだ言えない

今回紹介する研究では、カタッパ葉抽出液を使った飼育水が、透明水とグリーンウォーターよりも良い結果を示しました。
確認された主な結果は次のとおりです。
- パールグラミーとブルーグラミーの両方で、カタッパ葉抽出液区の生存稚魚数が最も多かった
- 透明水区と比べて、生存稚魚数が約2倍になった
- グリーンウォーター区と比べて、生存稚魚数が約30%多かった
- カタッパ葉抽出液区では、比成長率も高くなった
- カタッパ葉抽出液区には、ParameciumやColpidiumなどの微小生物が確認された
少なくとも、この研究条件で育てられたグラミーの稚魚については、ブラックウォーター区が最も良い成績でした。
一方で、この結果から次のことまでは言えません。
- メダカでも同じ結果になる
- 家庭で作った青水よりブラックウォーターの方が優れている
- ブラックウォーターを使えば稚魚の餌が不要になる
- カタッパ葉抽出液だけが生存率向上の原因だった
- すべての濃度や作り方のブラックウォーターで同じ結果になる
グラミー稚魚ではブラックウォーター区が最も良い結果を示しました。しかし、メダカの稚魚育成でグリーンウォーターより優れているかどうかは、まだ直接確認されていません。
したがって、この記事の結論は「グリーンウォーターをやめてブラックウォーターへ替えるべき」というものではありません。
正確には、
グリーンウォーターが一般的に使われる稚魚育成において、カタッパ葉によるブラックウォーターにも、生存と成長を支える飼育水として検討する根拠がある。
という位置づけです。
研究のタイトルと掲載情報

今回の中心となる論文は、次の研究です。
Terminalia catappa leaf extract is an effective rearing medium for larviculture of gouramis
日本語にすると、
「カタッパ葉抽出液はグラミーの仔魚育成に有効な飼育媒体である」
という内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | Yeong Yik Sung、A.B. Abol-Munafi |
| 掲載誌 | Journal of Applied Aquaculture |
| 巻・号 | 32巻2号 |
| ページ | 175〜185 |
| オンライン公開 | 2019年5月25日 |
| 掲載年 | 2020年 |
| DOI | 10.1080/10454438.2019.1614509 |
この論文は、「ブラックウォーターとグリーンウォーターのどちらが良いか」をメダカで調べた研究ではありません。
グラミーの稚魚育成に適した、安価で効果的な飼育水を検討した研究です。
研究対象はパールグラミーとブルーグラミー


研究で使われたのは、次の2種類です。
- パールグラミー
- ブルーグラミー
どちらもグラミーの仲間ですが、メダカとは異なる魚です。
論文の背景では、グラミーが適切に成長するために、軟水で酸性の水を必要とすることが説明されています。
そのため、研究者はカタッパ葉抽出液を、グラミー稚魚の飼育に使える水として検討しました。
この点は、結果を読み解くうえで非常に重要です。
カタッパ葉抽出液区の成績が良かった理由には、カタッパ葉に含まれる成分だけでなく、グラミーに適した酸性の水環境になったことが関係した可能性があるからです。
つまり、研究結果は、
「カタッパ葉には、すべての魚の稚魚を成長させる共通の作用がある」
と証明したものではありません。
グラミーという魚の特徴と、カタッパ葉抽出液によって作られた水環境の組み合わせによって、良い結果が得られた可能性があります。
研究で比較された3種類の飼育水

この研究で比較されたのは、次の3条件です。
| 試験区 | 飼育水の内容 |
|---|---|
| 透明水区 | カタッパ葉抽出液やクロレラを加えていない透明な飼育水 |
| グリーンウォーター区 | ティラピア養殖水由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含む水 |
| カタッパ葉抽出液区 | Terminalia catappaの葉から作られた抽出液を使用した水 |
稚魚はそれぞれの飼育水で10日間育てられました。
その後、次の項目が評価されました。
- 生存していた稚魚の数
- 比成長率(Specific Growth Rate:SGR)
比成長率とは
比成長率は、一定期間に魚がどれだけ成長したかを、期間と初期値を考慮して表す指標です。
単純に最終的な大きさだけを見るのではなく、飼育期間中の成長の速さを比較するときに使われます。
今回の研究では、生き残った数だけではなく、稚魚がどれくらい成長したかも比較されています。
研究で使われたグリーンウォーターは、家庭の青水と同じではない

この研究結果をメダカ飼育へ応用するときに、特に注意したい点です。
研究で使われたグリーンウォーターには、ティラピア養殖水由来のクロレラが1mL当たり10万細胞含まれていました。
つまり、含まれる藻類と細胞密度が示された研究用の飼育水です。
一方、家庭のメダカ容器で「グリーンウォーター」や「青水」と呼ばれている水と同じである(似たようなものである)が、容器によって状態が異なります。
見た目が緑色でも、次の条件が同じとは限りません。
- 含まれる植物プランクトンの種類
- 植物プランクトンの密度
- 微生物の種類と量
- 水温
- 栄養塩の量
- 光の強さ
- 飼育している魚の数
- 餌の量
- 作られてからの期間
したがって、この論文から、
「家庭のメダカ用青水よりブラックウォーターの方が優れている」
とは言えません。
研究から正確に言えるのは、
ティラピア養殖水由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含むグリーンウォーターと比較したところ、グラミー稚魚ではカタッパ葉抽出液区の方が良い生存・成長成績を示した。
ということです。
ただ個人的には、試して見る価値はあると思っていますが!
結果① カタッパ葉抽出液区の生存稚魚数が最も多かった

10日間の飼育後、カタッパ葉抽出液区では、パールグラミーとブルーグラミーの両方で、生存していた稚魚の数が最も多くなりました。
論文要旨では、カタッパ葉抽出液区の生存稚魚数は、次のように表現されています。
| 比較対象 | カタッパ葉抽出液区の結果 |
|---|---|
| 透明水区との比較 | 約2倍 |
| グリーンウォーター区との比較 | 約30%多い |
この結果は、カタッパ葉抽出液区で稚魚が単に少し多く残ったという程度ではありません。
特に透明水区との比較では、生存稚魚数が約2倍になっています。
また、グリーンウォーター区も透明水区より良い可能性はありますが、この論文の要旨で強調されているのは、カタッパ葉抽出液区がグリーンウォーター区よりも約30%多かったことです。
したがって、この研究条件に限れば、カタッパ葉抽出液は、グラミーの稚魚を生き残らせる飼育水として最も良い結果を示しました。
結果② カタッパ葉抽出液区では比成長率も高かった

研究では、生存稚魚数だけでなく、比成長率も調べられました。
カタッパ葉抽出液区では、比成長率が有意に高くなりました。
これは、カタッパ葉抽出液区で、
- 多くの稚魚が生き残った
- 生き残った稚魚の成長成績も良かった
という二つの結果が得られたことを意味します。
ただし、比成長率が高くなった原因が、カタッパ葉に含まれる特定の成分だけだったと証明されたわけではありません。
研究者は、複数の可能性を考察しています。
なぜブラックウォーター区の生存数が多かったのか

研究では、カタッパ葉抽出液区で良い結果が得られました。
しかし、どの要因が、どの程度生存と成長に影響したのかは確定していません。
論文で示された主な可能性を確認します。
酸性の飼育水がグラミーに適していた可能性

論文では、カタッパ葉抽出液が酸性であったことが、生存率の向上に重要な役割を果たした可能性が示されています。
研究の背景には、グラミーが適切に成長するために軟水・酸性水を必要とするという考えがあります。
そのため、カタッパ葉抽出液によって作られた水環境が、グラミーの稚魚に適していた可能性があります。
ここで重要なのは、酸性の水がすべての稚魚に良いと証明されたわけではないことです。
メダカとグラミーでは、生息環境や水質への適応が異なります。
したがって、
「グラミーで酸性水が良かったため、メダカもpHを同じように下げればよい」
とは言えません。
カタッパ葉の抗酸化的・治療的性質が関係した可能性
論文では、稚魚がカタッパ葉抽出液の抗酸化的・治療的性質から利益を得た可能性も示されています。
カタッパ葉については、魚類飼育の分野で、生存、成長、免疫、細菌感染などへの影響が研究されています。
2024年に発表されたレビュー論文でも、カタッパ葉やその抽出物について、次の分野が整理されています。
- 魚の成長
- 生存
- 免疫応答
- 細菌感染への抵抗性
- 水質
- 繁殖
- 卵や稚魚の育成
ただし、グラミー研究では、どの植物由来成分がどのように稚魚へ作用し、生存数を増やしたのかを個別に証明したわけではありません。
そのため、抗酸化作用や抗菌作用を、今回の結果の確定した原因として書くことはできません。
あくまで研究者が示した可能性です。
微小生物が追加の餌になった可能性
研究では、カタッパ葉抽出液区に次の微小生物が確認されました。
- Paramecium
- Colpidium
- その他のインフゾリア
研究者は、これらの微小生物が追加の生き餌となり、比成長率の向上に関係した可能性を考察しています。
この点は、メダカの稚魚育成を考えるうえでも興味深い結果です。
メダカの稚魚も非常に小さいため、口に入る大きさの餌を継続的に食べられるかどうかが重要になります。
しかし、この研究から次のことまでは言えません。
- カタッパ葉を入れれば必ずParameciumやColpidiumが増える
- メダカの容器でも同じ微小生物が発生する
- 発生した微小生物だけでメダカの稚魚を育てられる
- 微小生物が生存率向上の唯一の原因だった
論文では、微小生物が比成長率を高めた可能性が述べられていますが、その影響を単独で検証した実験ではありません。
ブラックウォーター区が良かった理由は一つに決められない

この研究結果を読むときに注意したいのは、カタッパ葉抽出液区と他の区では、複数の条件が同時に異なっていたことです。
例えば、カタッパ葉抽出液区では、次の要因が関係した可能性があります。
- 水が酸性だった
- カタッパ葉由来の成分が含まれていた
- 微小生物が存在していた
- それらが組み合わさっていた
したがって、
「タンニンが生存率を約2倍にした」
または、
「インフゾリアが増えたから生存率が上がった」
と一つの原因へ絞ることはできません。
研究から確認できるのは、カタッパ葉抽出液によって作られた飼育水全体が、グラミー稚魚の生存と成長に良い結果を示したということです。
この研究のカタッパの葉抽出液に似せた、ブラックウォーターが作れるのがサカタのベタのマジックリーフティーバッグです。(後に紹介します。)
グリーンウォーター区が最良にならなかった理由は確認されていない

今回の研究では、カタッパ葉抽出液区がグリーンウォーター区より良い結果を示しました。
しかし、論文の結果だけから、グリーンウォーター区の何が劣っていたのかを断定することはできません。
例えば、次のような説明を、研究で確認されていないまま書くべきではありません。
- グリーンウォーターには稚魚の餌が少なかった
- クロレラの密度が高すぎた
- グリーンウォーターの水質が悪かった
- グリーンウォーターでは酸素が不足した
- ブラックウォーターの方が栄養価が高かった
論文で示されたのは、3条件を比較した結果です。
グリーンウォーター区よりカタッパ葉抽出液区の成績が良かったことは確認できますが、グリーンウォーター区が最良にならなかった原因までは明確に分けられていません。
「グリーンウォーターよりブラックウォーターが良い」と断定できない5つの理由

1.対象魚がメダカではない
最も大きな理由です。
研究対象はパールグラミーとブルーグラミーであり、メダカではありません。
魚種が異なれば、適した水質、餌、成長速度、消化能力なども異なります。
2.グラミーは酸性水との相性が研究背景にある
研究は、グラミーが軟水・酸性水を必要とするという背景から行われました。
カタッパ葉抽出液が酸性だったことは、グラミーにとって特に有利だった可能性があります。
3.研究用グリーンウォーターと家庭の青水は似ているが、全く同じではない
研究では、ティラピア養殖由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含む水が使われました。
家庭のメダカ容器で自然にできた青水全般を代表する条件ではありません。
4.飼育期間は10日間
研究で評価されたのは10日間です。
長期間育てた場合も同じ差が続くかは、この研究だけでは分かりません。
5.ブラックウォーターのどの要因が作用したか確定していない
酸性の水、植物由来成分、微小生物など、複数の要因が同時に存在しました。
どれが最も重要だったかは確定していません。
それでもメダカの稚魚育成で参考になる点

メダカへ同じ結果を保証できなくても、この研究には参考になる点があります。
透明水だけが稚魚育成の選択肢ではない
研究では、透明水区よりも、カタッパ葉抽出液区の方が多くのグラミー稚魚が生き残りました。
これは、稚魚を育てる飼育水を考えるとき、透明で不純物が少ない水だけが最良とは限らないことを示す一例です。
植物由来成分や微小生物を含む水環境が、魚種によっては稚魚育成に有利になる可能性があります。
カタッパ葉抽出液はグリーンウォーターと直接比較されている
カタッパ葉の研究には、透明水との比較だけを行ったものもあります。
今回の研究では、稚魚育成に使われるグリーンウォーターも比較対象に含まれています。
そのうえで、カタッパ葉抽出液区が良い結果を示した点に、この研究の大きな価値があります。
微小生物が確認されている
ブラックウォーターは、単に水を茶色くするだけのものではありません。
今回の研究では、カタッパ葉抽出液区にParamecium、Colpidiumなどが確認されました。
これらが追加の生き餌になった可能性が示されたことは、稚魚用飼育水としてブラックウォーターを考える根拠の一つになります。
生存と成長の両方に良い結果が出た
カタッパ葉抽出液区では、生存稚魚数だけでなく、比成長率も高くなりました。
一つの指標だけではなく、生存と成長の両方で良い結果が報告されたことは重要です。
グリーンウォーターとブラックウォーターは、同じものではない
グリーンウォーターとブラックウォーターは、見た目の色が違うだけではありません。
| 項目 | グリーンウォーター | ブラックウォーター |
|---|---|---|
| 主な着色要因 | 植物プランクトンなど | 落ち葉やカタッパ葉などから溶け出した植物由来成分 |
| 研究で使われた条件 | ティラピア養殖由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含む水 | カタッパ葉抽出液を使った水 |
| グラミー研究の結果 | カタッパ葉抽出液区より生存稚魚数が少なかった | 3条件の中で生存稚魚数が最も多く、比成長率も高かった |
| 家庭のメダカへの結論 | どちらが優れているかは、この研究だけでは判断できない | |
ブラックウォーターを、グリーンウォーターの色違いとして考えるのは適切ではありません。
作られる仕組みや、水中に含まれるものが異なります。
そのため、
「グリーンウォーターかブラックウォーターか」
という二者択一だけで考えるのではなく、何を根拠に、どのような水環境を試したいのかを分けて考える必要があります。
メダカで比較するなら、二つの容器に分けて記録する
グラミー研究の結果を参考に、自宅のメダカで違いを確認したい場合は、グリーンウォーターをやめて全容器をブラックウォーターへ変更するのではなく、条件を分けて比較する方法があります。
例えば、同時期に孵化した稚魚を、できるだけ同じ数ずつ二つの容器へ分けます。
| 容器 | 飼育水 |
|---|---|
| A | 普段使用しているグリーンウォーター |
| B | マジックリーフティーバッグを使用したブラックウォーター |
比較する場合は、飼育水以外の条件をできるだけそろえます。
- 水量
- 開始時の稚魚数
- 孵化日
- 親魚
- 容器の形と大きさ
- 設置場所
- 餌の種類
- 給餌量
- 給餌回数
- 観察期間
記録する項目の例は次のとおりです。
- 開始時の稚魚数
- 日ごとの生存数
- 体の大きさ
- 餌を食べる様子
- 使用した飼育水
- 水量
- マジックリーフティーバッグの使用量
家庭での比較は、学術研究と同じものではありません。
しかし、一つの容器だけを見て判断するより、自分の飼育環境ではどちらが育てやすいかを確認しやすくなります。
マジックリーフティーバッグの使用目安

サカタのベタのマジックリーフティーバッグには、乾燥カタッパ葉が1袋5g入っています。
使用目安は、水量20〜30Lに1袋です。
乾燥葉5gを水量で割ると、乾燥葉換算濃度は次のようになります。
| 使用方法 | 計算 | 乾燥葉換算濃度 |
|---|---|---|
| 1袋を20Lに使用 | 5g÷20L | 0.25g/L |
| 1袋を25Lに使用 | 5g÷25L | 0.20g/L |
| 1袋を30Lに使用 | 5g÷30L | 約0.17g/L |
したがって、使用目安どおり20〜30Lに1袋使うと、乾燥葉換算では約0.17〜0.25g/Lになります。
使用方法は簡単です。熱湯で抽出するやり方と、ティーバッグをそのまま水槽へ入れる方法があります。
基本的には抽出型を推奨していますが、そのままティーバッグごと水槽に入れるやり方でも良いです。
抽出型のやり方は、まずティーバッグを1L以上入る容器に入れ、熱湯を1L注ぎます。そして一晩(約12時間)抽出後、その抽出液を水槽に入れます。
そして、ティーバッグをそのまま飼育水へ加えることも可能です。その場合、植物由来成分が少しずつ溶け出し、水が徐々に薄い茶褐色へ変化します。葉が細かく崩れにくいため、落ち葉を直接敷き詰める方法より量と状態を管理しやすいのが利点です。
pHに関しては、タイの水道水(pH7後半)に入れると、pHは0.2-0.3ほど下がります。
グラミー研究と同じ濃度とは言えない
今回のグラミー研究では、カタッパ葉抽出液が使われています。
マジックリーフティーバッグの乾燥葉換算濃度と、研究で稚魚が実際に接触した抽出成分量が同じであるとは確認できません。
そのため、
「マジックリーフティーバッグを20〜30Lに1袋使えば、グラミー研究と同じ条件になる」
とは言えません。
使用目安から計算できる約0.17〜0.25g/Lは、商品の乾燥葉投入量を理解するための数値です。
アマゾンリーフフィッシュ研究との数値比較

1本目の記事で紹介したアマゾンリーフフィッシュ稚魚研究では、カタッパ葉水抽出液の次の濃度が比較されました。
- 0.25g/L
- 0.50g/L
- 0.75g/L
- 1.00g/L
- 1.25g/L
マジックリーフティーバッグを20Lに1袋使用した場合、乾燥葉換算濃度は0.25g/Lです。
乾燥葉重量を水量で割った数値だけを見ると、アマゾンリーフフィッシュ研究で比較された最低濃度と同じです。
ただし、研究では調製された水抽出液が使われているため、ティーバッグから水中へ実際に溶け出す成分量と同じではありません。
また、研究で最良だったのは0.75g/L区ですが、対象魚はアマゾンリーフフィッシュであり、メダカではありません。
したがって、研究の0.75g/Lに合わせて商品の使用量を増やす根拠にはなりません。
ブラックウォーターを試す理由

今回の研究を踏まえて、メダカの稚魚育成でもマジックリーフティーバッグを試す理由は、次のように整理できます。
- グラミー稚魚では、カタッパ葉抽出液区の生存稚魚数が3条件の中で最も多かった
- 透明水区と比べて約2倍、グリーンウォーター区と比べて約30%多かった
- 生存数だけでなく、比成長率も高かった
- カタッパ葉抽出液区に微小生物が確認され、追加の生き餌になった可能性が示された
- 2024年のレビュー論文でも、カタッパ葉の稚魚育成への応用が研究分野の一つとして整理されている
- マジックリーフティーバッグは1袋の乾燥葉重量が5gと決まっている
- 使用目安20〜30Lに1袋で、乾燥葉換算濃度を計算できる
一方、メダカでの直接的な効果は確認されていません。
そのため、マジックリーフティーバッグの正確な位置づけは次のとおりです。
グラミー稚魚では、カタッパ葉抽出液が透明水やグリーンウォーターより良い生存・成長成績を示しました。マジックリーフティーバッグは、その研究で可能性が示されたカタッパ葉由来のブラックウォーターを、メダカの稚魚育成でも試すための選択肢です。
よくある質問
グリーンウォーターよりブラックウォーターの方が、メダカの稚魚に良いのですか?
現時点では判断できません。
グラミー研究ではブラックウォーター区が良い結果を示しましたが、対象魚はメダカではありません。
また、研究で使われたグリーンウォーターは、ティラピア養殖水由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含む条件です。
家庭のメダカ容器で自然にできた青水全般との優劣を示した研究ではありません。
グラミー研究では、ブラックウォーター区の生存率は何%でしたか?
論文要旨では、絶対的な生存率ではなく、生存稚魚数の比較として示されています。
カタッパ葉抽出液区では、透明水区の約2倍、グリーンウォーター区より約30%多くの稚魚が生存したと報告されています。
なぜブラックウォーター区の方が良かったのですか?
原因は確定していません。
論文では、酸性の飼育水、カタッパ葉抽出液の抗酸化的・治療的性質、ParameciumやColpidiumなどの追加の生き餌が関係した可能性が示されています。
ブラックウォーターにすれば、稚魚の餌は必要ありませんか?
不要とは言えません。
研究ではカタッパ葉抽出液区に微小生物が確認されましたが、それだけで稚魚が育つことを検証した研究ではありません。
カタッパ葉を入れれば、必ずインフゾリアが発生しますか?
そのようには言えません。
グラミー研究のカタッパ葉抽出液区で確認された結果であり、家庭のメダカ容器でも同じ微小生物が同じ量だけ発生することは確認されていません。
グリーンウォーターとブラックウォーターを混ぜてもよいですか?
今回のグラミー研究では、混合区は設定されていません。
透明水、グリーンウォーター、カタッパ葉抽出液の3条件を別々に比較した研究です。
したがって、この論文から併用時の結果を判断することはできません。
マジックリーフティーバッグの使用量はどれくらいですか?
水量20〜30Lに1袋です。
1袋には乾燥カタッパ葉が5g入っているため、乾燥葉換算では約0.17〜0.25g/Lになります。
マジックリーフティーバッグはグラミー研究と同じ濃度ですか?
同じとは言えません。
商品について計算できるのは、乾燥葉5gを水量で割った乾燥葉換算濃度です。
研究で使用されたカタッパ葉抽出液の実際の溶出成分量と、ティーバッグから家庭の飼育水へ溶け出す成分量が同じであるとは確認されていません。
メダカでも同じ比較研究はありますか?
今回確認した範囲では、メダカの稚魚を透明水、グリーンウォーター、カタッパ葉抽出液の3条件で直接比較した研究は確認できませんでした。
ブラックウォーターを使えば、生存率が30%上がりますか?
そのようには言えません。
約30%という数字は、グラミー研究で、カタッパ葉抽出液区の生存稚魚数がグリーンウォーター区より多かったという結果です。
メダカで同じ増加率になることを示す数字ではありません。
まとめ:グラミー研究は、メダカでもブラックウォーターを試す根拠になる
パールグラミーとブルーグラミーの稚魚を対象にした研究では、次の3種類の飼育水が比較されました。
- 透明水
- クロレラを1mL当たり10万細胞含むグリーンウォーター
- カタッパ葉抽出液を使ったブラックウォーター
10日間の飼育後、カタッパ葉抽出液区では、両方のグラミーで生存稚魚数が最も多くなりました。
- 透明水区と比べて約2倍
- グリーンウォーター区と比べて約30%多い
- 比成長率もカタッパ葉抽出液区で高かった
研究者は、良い結果が得られた理由として、次の可能性を示しています。
- カタッパ葉抽出液が酸性だったこと
- カタッパ葉抽出液の抗酸化的・治療的性質
- Paramecium、Colpidiumなどが追加の生き餌になった可能性
一方、この研究から次のことは言えません。
- メダカでも同じ結果になる
- 家庭の青水よりブラックウォーターの方が優れている
- ブラックウォーターだけで給餌が不要になる
- カタッパ葉抽出液のどの作用が生存数を増やしたか
- 長期間飼育しても同じ結果が続く
また、研究で使われたグリーンウォーターは、ティラピア養殖水由来のクロレラを1mL当たり10万細胞含む水です。
家庭のメダカ飼育で自然に発生した青水全般との比較ではありません。
したがって、2種類の水を競わせて、どちらか一方を否定するべきではありません。
今回の研究が示した重要な点は、次のことです。
グリーンウォーターが使われる稚魚育成において、カタッパ葉によるブラックウォーターも有力な飼育水の選択肢になり得る。少なくともグラミー稚魚では、透明水とグリーンウォーターより良い生存・成長成績が確認された。
サカタのベタのマジックリーフティーバッグには、乾燥カタッパ葉が1袋5g入っています。
使用目安は水量20〜30Lに1袋で、乾燥葉換算では約0.17〜0.25g/Lです。
グラミー研究と同じ抽出条件ではなく、メダカへの効果もまだ直接確認されていません。
それでも、グラミー研究で示された結果を根拠に、メダカの稚魚育成でもブラックウォーターを試す価値はあります。
カタッパ葉100%
サカタのベタ
マジックリーフティーバッグ
カタッパの葉を1袋5gに量った、ブラックウォーター抽出用のティーバッグです。葉を直接水槽へ入れず、自然な琥珀色の水を作れます。
- 1袋5g×6袋入り
- 1袋で約20〜30Lが目安
- メダカ・ベタ・グッピー・モーリー・テトラなどブラックウォーターを好む魚に
- 葉くずが散らばりにくい抽出タイプ
参考文献
- Sung, Y. Y. & Abol-Munafi, A. B. Terminalia catappa leaf extract is an effective rearing medium for larviculture of gouramis. Journal of Applied Aquaculture. 2020;32(2):175–185. doi:10.1080/10454438.2019.1614509
- Wang, X., Taufek, N. M., Arshad, N. M., et al. Recent advances of Terminalia catappa and its application in fish culture: A review. Reviews in Aquaculture. 2024;16(4):1741–1765. doi:10.1111/raq.12920
- Ramos, F. M., Abe, H. A., Couto, M. V. S. D., et al. Terminalia catappa improves growth performance and survival of the Amazon leaf fish (Monocirrhus polyacanthus) larvae submitted to handling stress. Aquaculture Research. 2020;51(11):4805–4808. doi:10.1111/are.14783