カタッパの葉はベタの泡巣づくりに関係する?論文から考えるブラックウォーターと繁殖行動

カタッパの葉はベタの泡巣づくりに関係する?論文から考えるブラックウォーターと繁殖行動

ベタを飼っていると、水面に白い泡の集まりができることがあります。

これは泡巣と呼ばれるもので、オスのベタに見られる自然な行動のひとつです。

ベタ飼育をしている方の中には、次のように感じたことがあるかもしれません。

  • マジックリーフを入れたら泡巣を作った気がする
  • ブラックウォーターにするとベタが落ち着いて泡巣を作りやすい気がする
  • 泡巣があると健康なの?
  • 泡巣がないと調子が悪いの?

結論から言うと、カタッパの葉やブラックウォーターは、ベタの泡巣づくりに関係する可能性があります。

実際に、カタッパ葉抽出液をベタの飼育水に加えた研究では、泡巣形成の頻度や泡巣サイズの増加が報告されています。

ただし、ここで大切なのは、マジックリーフを入れれば必ず泡巣を作るわけではないということです。

泡巣づくりには、水温、個体の成熟度、環境の落ち着き、水流、明るさ、体調など、さまざまな要素が関係します。

この記事では、論文の内容をもとに、初心者の方にもわかりやすく「ベタの泡巣」と「カタッパの葉・ブラックウォーター」の関係を整理していきます。


泡巣とは何か?

泡巣とは、オスのベタが水面に作る泡の集まりです。

ベタのオスは、口から空気を含んだ泡を出し、水面に泡のかたまりを作ります。繁殖の時には、産卵後の卵をこの泡巣の中に運び、守る行動が見られます。

つまり泡巣は、ベタにとって繁殖行動に関係する大切な行動です。

ただし、家庭で飼育しているベタが泡巣を作ったからといって、必ず繁殖できるという意味ではありません。

また、泡巣を作らないからといって、すぐに病気や異常だと決めつける必要もありません。

ベタには個体差があります。

よく泡巣を作るオスもいれば、ほとんど作らないオスもいます。水換え後に作る個体もいれば、環境に慣れてから作る個体もいます。

そのため、泡巣はベタの状態を見るひとつのサインにはなりますが、泡巣だけで健康状態を判断するものではありません。


野生のベタはどんな場所で泡巣を作るのかか

ベタの泡巣を理解するには、まず野生のベタがどのような場所で暮らし、泡巣を作っているのかを知ることが大切です。

Jaroensutasinee and Jaroensutasineeの研究では、タイの野生ベタの泡巣環境が調べられています。

この研究では、野生のベタは田んぼの縁に近い、浅く、抽水植物が密に生えた場所に生息していると報告されています。

また、泡巣が作られる場所の水は、溶存酸素、pH、塩分濃度が低く、遊離二酸化炭素と水温が高い傾向があったとされています。

初心者向けにわかりやすく言うと、野生のベタは、広くて明るくて流れの強い場所というより、浅くて、植物が多く、比較的落ち着いた水辺で泡巣を作っているということです。

ここから考えると、家庭の水槽でも、ベタが泡巣を作りやすい環境にはいくつかの共通点があります。

  • 水面が大きく揺れすぎない
  • 水流が強すぎない
  • 周囲の刺激が強すぎない
  • 水草や浮草など、落ち着ける要素がある
  • 水温が安定している

つまり、泡巣づくりを考える時に大切なのは、マジックリーフだけではありません。

ベタが安心して過ごせる水面環境を作ることが大切です。


カタッパ葉抽出液で泡巣形成が増えた研究

カタッパの葉とベタの泡巣について考えるうえで、特に参考になるのがMalawaらの2022年の研究です。

この研究では、オスのベタを対象に、カタッパ葉抽出液を異なる濃度で飼育水に加え、8週間にわたって影響を調べています。

比較された濃度は、0.125 g/L、0.25 g/L、0.5 g/L、1 g/Lです。抽出液を入れない対照群も用意され、水質、成長、餌の利用、皮膚色、泡巣形成、血液指標などが調べられました。

この研究で注目されるのが、0.25 g/Lのカタッパ葉抽出液です。

論文では、0.25 g/Lのカタッパ葉抽出液を加えた水で飼育したベタにおいて、成長や血液化学に一貫した悪影響が見られず、水質改善や泡巣形成の増加が報告されています。

泡巣については、対照群と比較して、泡巣形成頻度が平均1.70倍、泡巣サイズが平均1.52倍になったとされています。

これは、昔からベタ飼育者の間で言われてきた「カタッパの葉を使うと泡巣を作りやすい気がする」という経験談を考えるうえで、とても興味深い結果です。

サカタのベタ ベタ発酵水は、ベタとカタッパの葉の研究を元に含量を設定しており、使用目安で使用すれば、泡巣が作りやすくなる環境に簡単にできるのも嬉しい点です。

ただし、ここでも注意が必要です。

この研究は、実験条件のもとで行われたものです。家庭の水槽とは、水量、水温、餌の量、換水頻度、個体差、飼育容器、周囲の環境などが違います。

そのため、論文の結果をそのまま家庭水槽に当てはめて、次のように断定することはできません。

  • マジックリーフを入れれば必ず泡巣を作る
  • 泡巣が増えたら必ず健康
  • 泡巣がないベタは調子が悪い
  • ブラックウォーターにすれば繁殖が必ず成功する

正しくは、カタッパ葉抽出液が泡巣形成に良い方向の影響を与える可能性が示されたと考えるのが安全です。


なぜブラックウォーターで泡巣を作りやすくなる可能性があるのか

では、なぜカタッパの葉やブラックウォーターが、泡巣形成に関係する可能性があるのでしょうか。

明確な理由をひとつだけに決めることはできません。

しかし、ベタの自然環境や行動を考えると、いくつかの理由が考えられます。

1. 光や周囲の刺激がやわらぐ

ブラックウォーターは、植物由来成分によって水が茶色く色づきます。

この色づきによって、透明な水よりも光の通り方がやわらかく感じられることがあります。

ベタは周囲の動きや反射に反応しやすい魚です。ガラス面に映った自分にフレアリングしたり、人の動きに反応したりすることがあります。

刺激が強すぎる環境では、ベタが落ち着きにくくなる場合があります。

ブラックウォーターは、そうした刺激をやわらげる環境づくりの一部として使えます。

2. 水面が落ち着いていると泡巣を作りやすい

泡巣は水面に作られるため、水流が強すぎると崩れやすくなります。

フィルターの水流が強い水槽や、エアレーションで水面が大きく動いている水槽では、泡巣ができにくいことがあります。

ブラックウォーターそのものが水流を弱くするわけではありませんが、ブラックウォーターを使う飼育スタイルでは、水草、浮草、隠れ家、弱い水流などを組み合わせることが多くなります。

その結果として、ベタが泡巣を作りやすい環境に近づく可能性があります。

3. 植物や落ち葉のある環境に近づく

野生のベタは、植物が密に生えた浅い水域で見られることがあります。

そのような環境では、落ち葉や植物由来の成分が水に含まれていることも自然です。

カタッパの葉やブラックウォーターを使うことは、家庭水槽でそうした自然に近い雰囲気を作るひとつの方法です。

ただし、自然に近い雰囲気を作ることと、水を管理しないことは違います。

ブラックウォーターにしていても、餌の食べ残しやフンがたまれば水質は悪くなります。

自然らしさと水質管理は、必ずセットで考える必要があります。


泡巣があると健康?泡巣がないと異常?

初心者の方が特に迷いやすいのが、泡巣の見方です。

泡巣があると「元気そう」と感じますし、泡巣がないと「調子が悪いのかな」と不安になるかもしれません。

しかし、泡巣があるかどうかだけで、ベタの健康状態を判断することはできません。

泡巣は、オスのベタの自然な行動のひとつです。

落ち着いた環境で作ることもありますし、水換え後に作ることもあります。繁殖を意識している時に作ることもあります。

一方で、元気でも泡巣をあまり作らない個体もいます。

特に、次のような場合は泡巣を作りにくいことがあります。

  • まだ若く、成熟しきっていない
  • 水温が低すぎる
  • 水流が強く、水面が揺れている
  • 周囲の刺激が多い
  • 環境に慣れていない
  • 個体差として、あまり泡巣を作らない

逆に、泡巣があるからといって、必ずしも水質が良いとは限りません。

泡巣があっても、アンモニアや亜硝酸がたまっている可能性はあります。

そのため、泡巣を見る時は、次のような観察と合わせて判断することが大切です。

  • 餌をよく食べるか
  • 泳ぎ方に異常がないか
  • ヒレを閉じていないか
  • 呼吸が荒くないか
  • 体表やヒレに異常がないか
  • 水質が悪くなっていないか

泡巣はあくまで、ベタの様子を見るためのひとつのヒントです。


泡巣づくりを意識した水槽環境

ベタに泡巣を作らせたい場合、無理に何かをさせる必要はありません。

大切なのは、ベタが落ち着いて過ごせる環境を作ることです。

泡巣づくりを意識するなら、次のようなポイントを見直してみましょう。

水温を安定させる

ベタは熱帯魚です。

水温が低すぎると、動きが鈍くなったり、餌食いが落ちたりすることがあります。

繁殖行動や泡巣づくりを意識する場合も、急な温度変化は避け、水温を安定させることが大切です。

水流を弱くする

ベタは長いヒレを持つ品種も多く、強い水流が苦手な個体がいます。

泡巣は水面に作るため、強い水流で水面が大きく揺れていると、泡巣が作りにくくなります。

フィルターを使う場合は、水流を弱める工夫をしましょう。

浮草や水草を使う

浮草や水草は、ベタにとって隠れ家や休む場所になります。

また、水面付近に植物があると、泡巣が安定しやすくなることもあります。

ただし、浮草で水面を完全に覆いすぎると、ベタが空気を吸いにくくなる場合があります。

ベタはラビリンス器官を持ち、水面から空気を吸う魚です。水面には必ず呼吸できるスペースを残しましょう。

周囲の刺激を減らす

ベタは人の動きや反射に反応しやすい魚です。

落ち着かない様子が続く場合は、背景シートを貼る、隣の水槽との間に仕切りを置く、照明を強くしすぎないなどの工夫ができます。

ブラックウォーターも、光や周囲の刺激をやわらげる補助として使えます。

水質を安定させる

泡巣づくりを考える時でも、基本は水質管理です。

ブラックウォーターにしていても、アンモニアや亜硝酸は発生します。

特に小型水槽では、少しの餌やフンでも水質が変わりやすくなります。

水換え、餌の量、底の汚れの除去、必要に応じた水質検査を続けることが大切です。


カタッパの葉を使う時の注意点

カタッパの葉やマジックリーフは、ベタ飼育で昔から使われてきた自然素材です。

しかし、自然素材だからといって、いくらでも入れて良いわけではありません。

初心者の方は、次の点に注意してください。

濃くしすぎない

ブラックウォーターは、濃ければ濃いほど良いというものではありません。

いきなり濃くするのではなく、薄めから始めて、ベタの様子を見ながら調整しましょう。

葉を入れっぱなしにしない

葉をそのまま水槽に入れる場合、時間が経つと葉が崩れたり、汚れがたまったりすることがあります。

見た目が悪くなったり、においが出たり、水が白く濁ったりした場合は、早めに取り出し、水質を確認しましょう。

水換えの代わりにしない

カタッパの葉やブラックウォーターは、水換えの代わりにはなりません。

泡巣ができていても、水質が悪化していることはあります。

水換えと観察は、必ず続けましょう。

病気を治す目的で使わない

カタッパ葉抽出液については、抗菌性や生存率、血液指標に関する研究があります。

しかし、それは家庭水槽で病気が治ることを保証するものではありません。

サカタのベタでは、カタッパの葉やブラックウォーターを薬ではなく、水環境づくりの補助として考えています。


サカタのベタ ベタ発酵水について

サカタのベタでは、ベタのためのブラックウォーターづくりとして、サカタのベタ ベタ発酵水をご用意しています。

ベタ発酵水は、カタッパの葉を中心に、アカシア・カテチュー樹皮、ヤシの雄花、マンゴスチン皮、天然塩などを使ったティーバッグ式の商品です。

泡巣づくりを意識する時にも、ベタが落ち着きやすい環境づくりの一部として使いやすいアイテムです。

葉をそのまま水槽に入れる方法もありますが、ティーバッグ式には次のようなメリットがあります。

  • お湯で抽出してから使える
  • 濃さを調整しやすい
  • 葉くずが水槽内に散らばりにくい
  • 小型水槽でも少量ずつ使いやすい
  • 水換え後や導入直後にも使いやすい

使い方は、ティーバッグをお湯で抽出し、しっかり冷ましてから、飼育水に少しずつ加える方法です。

いきなり濃くするのではなく、ベタの様子を見ながら少量ずつ使うことをおすすめします。

サカタのベタでは、ベタ発酵水を泡巣を必ず作らせる商品とは考えていません。

また、病気を治す商品でもありません。

ベタ発酵水は、あくまでベタが落ち着きやすいブラックウォーター環境づくりをサポートする商品です。

水温管理、水換え、餌の量、観察、水流調整、隠れ家づくり。

こうした基本管理と組み合わせることで、ベタにやさしい環境づくりにつながります。


まとめ:泡巣はベタの自然な行動。でも、それだけで判断しない

ベタの泡巣は、オスに見られる自然な繁殖行動のひとつです。

カタッパ葉抽出液を使った研究では、泡巣形成頻度や泡巣サイズの増加が報告されています。

また、野生ベタの泡巣環境を調べた研究からは、ベタが浅く、植物が多く、比較的落ち着いた水域で泡巣を作ることがわかります。

そのため、カタッパの葉やブラックウォーターは、ベタが落ち着きやすい環境づくりの一部として使う価値があります。

ただし、泡巣があるから必ず健康、泡巣がないからすぐ異常、というわけではありません。

泡巣はあくまで、ベタの状態を見るためのひとつのサインです。

本当に大切なのは、日々の観察です。

  • 餌をよく食べるか
  • 泳ぎ方は自然か
  • ヒレを閉じていないか
  • 呼吸が荒くないか
  • 水質が悪化していないか
  • 落ち着ける環境があるか

ベタは小さな魚ですが、環境の変化に敏感です。

水温、水質、水流、明るさ、隠れ家、ブラックウォーター。

そのひとつひとつを整えることで、ベタが安心して過ごしやすい環境に近づきます。

サカタのベタでは、これからも論文や研究をもとに、初心者の方にもわかりやすく、ベタにとって本当にやさしい飼育環境を考えていきます。

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参考文献

  1. Malawa, S., Nuntapong, N., Suanyuk, N., & Thongprajukaew, K. (2022).
    Addition of different concentrations of Indian almond (Terminalia catappa) leaf extract to aquarium water resulted in improved water quality and increased bubble nest formation by male Siamese fighting fish (Betta splendens) without having any consistent negative effects on growth metrics and blood chemistry.
    Aquaculture International, 30, 3269–3288.
    DOI: https://doi.org/10.1007/s10499-022-00960-1
  2. Jaroensutasinee, M., & Jaroensutasinee, K. (2001).
    Bubble nest habitat characteristics of wild Siamese fighting fish.
    Journal of Fish Biology, 58(5), 1311–1319.
    DOI: https://doi.org/10.1111/j.1095-8649.2001.tb02288.x
  3. Nugroho, R. A., Manurung, H., Saraswati, D., Ladyescha, D., & Nur, F. M. (2016).
    The Effects of Terminalia catappa L. Leaves Extract on the Water Quality Properties, Survival and Blood Profile of Ornamental Fish (Betta sp) Cultured.
    Biosaintifika: Journal of Biology & Biology Education, 8(2), 240–247.
    DOI: https://doi.org/10.15294/biosaintifika.v8i2.6519

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