ベタとブラックウォーターの相性が良いと言われる理由|論文から考える“落ち着きやすい水”の作り方

ベタとブラックウォーターの相性が良いと言われる理由|論文から考える“落ち着きやすい水”の作り方

ベタを飼っていると、よく聞く言葉があります。

「ベタにはブラックウォーターが合う」

ブラックウォーターとは、カタッパの葉などから出る植物由来成分によって、薄い茶色から濃い茶色に色づいた水のことです。

ベタ飼育では、昔からマジックリーフやカタッパの葉を使ってブラックウォーターを作る方法があります。

でも、初心者の方からすると、少し疑問に感じるかもしれません。

  • なぜベタに茶色い水が良いと言われるの?
  • 透明な水の方がきれいで良いのでは?
  • ブラックウォーターにすると本当にベタが落ち着くの?
  • 水が汚れているのとは何が違うの?

結論から言うと、ブラックウォーターはベタに絶対必要なものではありません。

透明な水でも、水温、水質、水換え、餌の量、隠れ家などをきちんと管理できていれば、ベタを健康的に飼育することはできます。

ただし、ベタの自然環境や行動、そしてカタッパ葉抽出液に関する研究を見ていくと、ブラックウォーターはベタが落ち着きやすい環境づくりの一部として、とても理にかなった使い方ができると考えられます。

この記事では、ベタとブラックウォーターの相性が良いと言われる理由を、初心者の方にもわかりやすく整理していきます。


ベタはどんな環境にすむ魚なのか

まず、ベタという魚の自然環境から考えてみます。

ベタは東南アジア原産の魚として知られています。特にタイ周辺の浅い水域、田んぼの周辺、水草や抽水植物が多い場所などに生息しているとされています。

野生のベタの泡巣環境を調べた研究では、タイのベタは田んぼの縁に近い、浅く、植物が密に生えた場所に生息していたと報告されています。

つまり、ベタはもともと、広く開けた明るい水の中を高速で泳ぎ回る魚というより、浅く、流れがゆるく、植物や隠れ場所の多い環境に適応してきた魚だと考えられます。

もちろん、現在ペットとして流通しているベタは、長い年月をかけて品種改良された観賞魚です。野生のベタと、家庭で飼うショーベタやハーフムーン、プラカットなどを完全に同じように考えることはできません。

それでも、ベタが持っている基本的な性質を考えるうえで、自然環境の情報はとても参考になります。

ベタにとって大切なのは、ただ水が入っていることではありません。

水温が合っていること。水質が悪くないこと。強い水流がないこと。周囲の刺激が強すぎないこと。休める場所があること。

こうした条件がそろって、はじめてベタは落ち着きやすくなります。

ブラックウォーターは、その中の「光や周囲の刺激をやわらげる環境づくり」に役立つ可能性があります。


ブラックウォーターとは何か

ブラックウォーターという名前を聞くと、真っ黒な水をイメージする方もいるかもしれません。

しかし、ベタ飼育で使うブラックウォーターは、必ずしも真っ黒にする必要はありません。

カタッパの葉やマジックリーフを使うと、水は薄い茶色、琥珀色、濃い茶色のように色づきます。

この色は、葉から出る植物由来成分によるものです。代表的には、タンニン、フェノール類、フラボノイドなどが関係すると考えられています。

ここで大切なのは、茶色い水=汚れた水ではないということです。

お茶を入れると水に色がつくように、植物の成分が水に出ることで色がつく場合があります。

ただし、茶色ければ何でも良いわけではありません。

餌の食べ残し、フン、腐った葉、バクテリアの異常増殖などで水が悪くなっている場合もあります。

そのため、ブラックウォーターを使う時は、次のように考えるとわかりやすいです。

植物由来の色づきは、汚れそのものではない。

でも、ブラックウォーターにしていても、水質管理は必要。

この2つを分けて考えることが大切です。


なぜベタにブラックウォーターが合うと言われるのか

では、なぜベタにブラックウォーターが合うと言われるのでしょうか。

理由は大きく分けて4つあります。

1. 光や周囲の刺激をやわらげやすい

ベタは好奇心が強く、周囲の動きにも反応しやすい魚です。

人が近づくと寄ってきたり、ガラス面に映った自分に反応したり、隣の水槽の魚にフレアリングしたりすることがあります。

これはベタらしい魅力でもありますが、刺激が強すぎる環境では、落ち着きにくくなることもあります。

ブラックウォーターにすると、水に色がつくため、透明な水よりも光の通り方が少しやわらかくなります。

もちろん、ブラックウォーターだけでストレスが完全になくなるわけではありません。

しかし、背景シート、浮草、隠れ家、水草などと組み合わせることで、ベタにとって安心しやすい環境を作りやすくなります。

2. 自然に近い雰囲気を作りやすい

ベタの自然環境は、完全に透明で何もない水槽とは違います。

浅い水、植物、落ち葉、隠れ場所、ゆるやかな水の動き。そうした要素がある環境の方が、ベタの性質には合いやすいと考えられます。

ブラックウォーターは、そうした自然に近い雰囲気を作るためのひとつの方法です。

ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、自然に近い環境を作ることと、管理しないことは違うという点です。

自然っぽい水槽にしていても、餌を与えすぎれば水は悪くなります。水量が少なければ、アンモニアもたまりやすくなります。

自然に近い雰囲気を作ることと、水質をきちんと管理すること。この2つを両立させることが、家庭でのベタ飼育では大切です。

3. カタッパ葉抽出液に関する研究がある

ブラックウォーターについて語る時、ただの経験談だけではなく、研究があることも重要です。

2022年に発表されたMalawaらの研究では、オスのベタを対象に、カタッパ葉抽出液を異なる濃度で飼育水に加え、その影響を8週間調べています。

この研究では、0.125 g/L、0.25 g/L、0.5 g/L、1 g/Lのカタッパ葉抽出液が使われ、抽出液を入れない対照群とも比較されています。

調べられた内容は、水質、成長、餌の利用、皮膚の色、泡巣形成、消化酵素、筋肉の品質、血液指標などです。

特に注目したいのは、0.25 g/Lの濃度です。この濃度では、成長や血液指標に一貫した悪影響が見られず、水質改善や泡巣形成の増加が報告されています。

また、泡巣形成頻度は対照群と比べて平均1.70倍、泡巣サイズは平均1.52倍に増加したとされています。

泡巣はベタの繁殖行動に関係する自然な行動です。

もちろん、泡巣を作るから必ず健康、泡巣を作らないから不健康、という単純な話ではありません。

それでも、カタッパ葉抽出液を使った環境で泡巣形成に変化が見られたことは、ベタとブラックウォーターの関係を考えるうえで興味深い結果です。

4. 水槽環境そのものの大切さともつながる

近年、ベタの飼育環境についての研究も増えています。

2024年の研究では、水槽サイズや水草、隠れ家などの環境が、ベタの行動や福祉に与える影響が調べられています。

その研究では、小さく何もない容器よりも、より大きく、植物や隠れ家がある環境の方が望ましい可能性が示されています。

これは、ブラックウォーターだけが大事という意味ではありません。

むしろ逆です。

ベタが落ち着きやすい環境を作るには、ブラックウォーターだけでなく、水量、水温、水流、水草、隠れ家、照明、周囲の刺激などを総合的に考える必要があります。

ブラックウォーターは、その中のひとつです。

「これを入れれば全部解決」ではなく、ベタにやさしい環境づくりの一部として使うのが正しい考え方です。


ブラックウォーターは薬ではない

ここはとても大事です。

ブラックウォーターやマジックリーフについて調べていると、時々、病気に効くような表現を見かけることがあります。

たしかに、カタッパ葉の抽出物については、観賞魚由来の細菌に対する抗菌活性を調べた研究があります。

また、カタッパ葉抽出液を使ったBetta sp.の研究では、生存率や血液指標への良い影響が示唆された報告もあります。

しかし、だからといって、家庭の水槽で「病気が治る」と断定することはできません。

病気の原因はさまざまです。

  • 水質悪化
  • 急な水温変化
  • 輸送ストレス
  • 細菌感染
  • 寄生虫
  • 餌の問題
  • 個体の体力低下

ブラックウォーターは、これらをすべて解決する薬ではありません。

サカタのベタでは、ブラックウォーターを病気を治すものではなく、ベタが落ち着きやすい水環境を整えるための補助として考えています。

この考え方の方が、初心者の方にとっても安全です。


ブラックウォーターを使いやすい場面

では、家庭でベタを飼う場合、ブラックウォーターはどんな時に使いやすいのでしょうか。

ベタを迎え入れた直後

ベタを迎え入れた直後は、環境が大きく変わります。

ショップの水、輸送袋、新しい水槽。水温、pH、明るさ、周囲の景色、水のにおいなど、ベタにとっては多くの変化があります。

この時期は、なるべく刺激を少なくして、落ち着きやすい環境を作ることが大切です。

薄いブラックウォーターは、光や周囲の刺激をやわらげる補助として使いやすいです。

違う環境下へ変えた時の水替え時

水換えはベタ飼育に欠かせません。

ただし、水換え後は水がきれいになる一方で、ベタにとっては環境の変化でもあります。

水温やカルキ抜きに注意していても、完全に同じ水ではありません。

水換え後にブラックウォーターを少量加えることで、環境変化をやわらげる補助として使うことができます。

ただし、ブラックウォーターを入れたから水換えが不要になるわけではありません。

水換えは水換えとして、きちんと続ける必要があります。

ベタが落ち着かない時

ベタが水槽の前面を何度も行ったり来たりする。

ガラス面に映った自分にずっと反応している。

人の動きに過剰に反応している。

このような時は、周囲の刺激が強すぎる可能性があります。

もちろん、元気で好奇心があるだけの場合もあります。

しかし、ずっと落ち着かない様子が続く場合は、照明、背景、隠れ家、水草、水流などを見直す価値があります。

ブラックウォーターは、その見直しのひとつとして使えます。

繁殖を意識する時

ベタの繁殖では、昔からカタッパの葉やマジックリーフが使われることがあります。

Malawaらの研究でも、カタッパ葉抽出液を使ったグループで泡巣形成の増加が報告されています。

そのため、繁殖環境づくりの一部としてブラックウォーターを考える価値はあります。

ただし、繁殖の成功はブラックウォーターだけで決まりません。

オスとメスの相性、水温、成熟度、容器、隠れ場所、タイミングなど、さまざまな条件が関係します。


ブラックウォーターを使う時の注意点

ブラックウォーターは便利ですが、使い方には注意が必要です。

濃くしすぎない

初心者の方は、いきなり濃いブラックウォーターにするより、薄めから始めるのがおすすめです。

自然素材だからといって、たくさん入れれば良いわけではありません。

ベタの様子を見ながら、少しずつ調整することが大切です。

水換えの代わりにしない

ブラックウォーターにしていても、アンモニアや亜硝酸は発生します。

特に小型水槽では、水質が変わりやすくなります。

ブラックウォーターは水質管理を助ける可能性はありますが、水換えそのものの代わりにはなりません。

腐敗やにおいに注意する

葉をそのまま水槽に入れる場合、時間が経つと葉が崩れたり、汚れがたまったりすることがあります。

においが強い、白く濁る、膜が張る、ベタの様子がおかしいといった場合は、すぐに水質を確認し、必要に応じて水換えをしてください。

ベタの様子を見る

どんなに良いと言われる方法でも、すべてのベタに同じように合うとは限りません。

ベタには個体差があります。

ブラックウォーターにした後は、泳ぎ方、ヒレの開き方、呼吸、餌食い、底でじっとしていないかなどを観察しましょう。


サカタのベタ ベタ発酵水について

サカタのベタでは、ベタのためのブラックウォーターづくりとして、サカタのベタ ベタ発酵水をご用意しています。

ベタ発酵水は、カタッパの葉を中心に、アカシア・カテチュー樹皮、ヤシの雄花、マンゴスチン皮、天然塩などを使ったティーバッグ式の商品です。

葉をそのまま水槽に入れる方法もありますが、ティーバッグ式には使いやすさがあります。

  • お湯で抽出してから使える
  • 葉くずが水槽内に散らばりにくい
  • 濃さを調整しやすい
  • 小型水槽でも少量ずつ使いやすい
  • 導入直後や水換え後に使いやすい

使い方は、ティーバッグをお湯で抽出し、しっかり冷ましてから、飼育水に少しずつ加える方法です。

いきなり濃くするのではなく、ベタの様子を見ながら少量ずつ使うことをおすすめします。

サカタのベタでは、ベタ発酵水を病気を治すための商品としてではなく、ベタが落ち着きやすい水環境づくりをサポートする商品として考えています。

水温管理、水換え、餌の量、観察。

そうした基本管理と組み合わせて使うことで、ブラックウォーターはベタにやさしい環境づくりのひとつになります。


まとめ:ブラックウォーターは“万能”ではなく、環境づくりのひとつ

ベタとブラックウォーターの相性が良いと言われる理由は、いくつかあります。

  • ベタは浅く植物の多い環境にすむ魚であること
  • ブラックウォーターが光や周囲の刺激をやわらげやすいこと
  • カタッパ葉抽出液に関する研究で、水質改善や泡巣形成の増加が報告されていること
  • ベタの飼育では、水量、隠れ家、水草などの環境づくりも重要であること

ただし、ブラックウォーターは万能ではありません。

病気を治す薬ではありませんし、水換えの代わりにもなりません。

大切なのは、ブラックウォーターをベタにやさしい環境づくりの一部として使うことです。

透明な水が悪いわけではありません。

茶色い水にすれば、それだけで完璧になるわけでもありません。

でも、ベタが落ち着きやすい環境を考える時、カタッパの葉やブラックウォーターは、十分に検討する価値のある選択肢です。

サカタのベタでは、これからも論文や研究をもとに、初心者の方にもわかりやすく、ベタにとって本当にやさしい飼育環境を考えていきます。

サカタのベタはベタ発酵水はこちら


参考文献

  1. Malawa, S., Nuntapong, N., Suanyuk, N., & Thongprajukaew, K. (2022). Addition of different concentrations of Indian almond (Terminalia catappa) leaf extract to aquarium water resulted in improved water quality and increased bubble nest formation by male Siamese fighting fish (Betta splendens) without having any consistent negative effects on growth metrics and blood chemistry. Aquaculture International, 30, 3269–3288. DOI: https://doi.org/10.1007/s10499-022-00960-1
  2. Nugroho, R. A., Manurung, H., Saraswati, D., Ladyescha, D., & Nur, F. M. (2016). The Effects of Terminalia catappa L. Leaves Extract on the Water Quality Properties, Survival and Blood Profile of Ornamental Fish (Betta sp) Cultured. Biosaintifika: Journal of Biology & Biology Education, 8(2), 240–247. DOI: https://doi.org/10.15294/biosaintifika.v8i2.6519
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