ベタの病気予防にブラックウォーターは使える?論文から慎重に考えるカタッパの葉の役割
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ベタを飼っていると、病気の心配はどうしても出てきます。
ヒレが裂ける、ヒレが溶ける、体表に異変が出る、元気がなくなる、底でじっとする、餌を食べない。
こうした様子を見ると、飼育者としてはとても不安になります。
その中で、よく聞かれるのが次のような話です。
- マジックリーフは病気予防になるの?
- ブラックウォーターにするとベタが病気になりにくいの?
- カタッパの葉には抗菌作用があるの?
- 尾ぐされ病や松かさ病にも使えるの?
結論から言うと、カタッパの葉やブラックウォーターには、ベタの水環境づくりをサポートする可能性があります。
また、カタッパ葉抽出物については、抗菌性や魚の生存率、血液指標、Aeromonas hydrophilaへの抵抗性に関する研究もあります。
ただし、ここで非常に大切なことがあります。
ブラックウォーターは薬ではありません。
病気を治すものでも、病気を完全に防ぐものでもありません。
論文で抗菌性や抵抗性に関する結果が報告されていることと、家庭の水槽で「病気が治る」「病気にならない」と言えることは別です。
この記事では、カタッパの葉とベタの病気予防について、論文の内容をもとに、初心者の方にもわかりやすく、そして慎重に整理していきます。
まず「病気予防」という言葉を分けて考える

「病気予防」という言葉は、とても便利ですが、少し注意が必要です。
病気予防と聞くと、「これを入れれば病気にならない」というイメージを持ってしまうかもしれません。
しかし、ベタの病気は、ひとつの原因だけで起こるわけではありません。
たとえば、次のような要素が関係します。
- 水質悪化
- アンモニアや亜硝酸
- 急な水温変化
- 輸送や導入時のストレス
- 餌の与えすぎ
- 水流や明るさなどの環境ストレス
- 細菌や寄生虫
- 個体の体力や年齢
つまり、病気予防を考える時は、ひとつの商品や素材だけに頼るのではなく、水質、水温、餌、観察、環境づくりを総合的に整えることが大切です。
カタッパの葉やブラックウォーターは、その中のひとつとして考えるのが現実的です。
サカタのベタでは、ブラックウォーターを「病気を治すもの」ではなく、ベタが落ち着きやすい水環境づくりをサポートするものとして考えています。
カタッパ葉抽出物には抗菌性を調べた研究がある

カタッパの葉と病気予防について考えるうえで、よく話題になるのが抗菌性です。
Chansue and Assawawongkasemの研究では、インディアンアーモンドリーフ、つまりカタッパの葉の水抽出物について、魚病由来の細菌に対するin vitro抗菌活性と、観賞魚への毒性が調べられています。
in vitroとは、試験管内や培地上など、生きた魚の体内ではない実験条件のことです。
この研究では、病気の水生動物から分離された複数の細菌に対して、カタッパ葉水抽出物の最小発育阻止濃度、いわゆるMICが調べられました。
その結果、抽出物のMICは0.8〜2.0 mg/mLの範囲だったと報告されています。
また、グッピー、錦鯉、ベタに対して毒性評価も行われています。
この結果だけを見ると、「やっぱりカタッパの葉は抗菌的に使えるのでは?」と思うかもしれません。
たしかに、研究上はカタッパ葉水抽出物に抗菌性が示されたと言えます。
しかし、ここで大切なのは、in vitroの抗菌性と、家庭水槽での治療効果は同じではないということです。
培地上で細菌の増殖を抑えたからといって、家庭の水槽でベタの病気が治るとは言えません。予防にも過度な期待は厳禁です。
家庭の水槽には、ろ過、底の汚れ、餌、pH、水温、魚の体力、さまざまな微生物など、多くの要素があります。
そのため、カタッパ葉の抗菌性は、水環境づくりを考えるうえで参考になる研究として扱うのが安全です。
Aeromonas hydrophilaへの抵抗性を調べた研究

ベタの病気と関連して、よく出てくる細菌のひとつにAeromonas hydrophilaがあります。
日本語ではエロモナス菌と呼ばれることもあります。
Aeromonas属の細菌は、観賞魚の病気と関連して語られることがあり、水質悪化や魚の体力低下と重なると問題になる場合があります。
Nugrohoらの研究では、Betta sp.を対象に、Terminalia catappa抽出物が生存率、血液指標、Aeromonas hydrophilaへの抵抗性に与える影響が調べられています。
この研究では、カタッパ葉抽出物に浸漬した魚を、Aeromonas hydrophilaを用いた試験にかけ、48時間にわたって生存率や血液指標が評価されました。
その結果、浸漬した魚では対照群より生存率が高く、500 ppmのTerminalia catappa extractが生存率、血液指標、Aeromonas hydrophilaへの抵抗性の改善に有益である可能性が示唆されています。
これは、カタッパ葉抽出物と魚の抵抗性について考えるうえで、とても興味深い研究です。
ただし、この結果も家庭水槽でそのまま「エロモナス病を治せる」と言えるものではありません。予防も関しても過度な期待はしない方が良いです。
研究では、決められた濃度、決められた条件、決められた方法で試験が行われています。
家庭の水槽では、水量、水質、餌、ベタの体力、病気の進行具合、細菌の種類などが大きく違います。
そのため私たちにとって、この研究は「カタッパ葉抽出物が魚の抵抗性に関係する可能性がある」と考える方が良いと思います。
Betta sp.の生存率と血液指標を調べた研究

カタッパ葉抽出物については、Betta sp.の生存率や血液指標を調べた研究もあります。
Nugrohoらの2016年の研究では、Betta sp.を対象に、Terminalia catappa leaves extractを異なる濃度で使用し、水質、生存率、血液指標への影響を調べています。
比較された濃度は、0、125、250、375、500、625 ppmです。
この研究では、30日後に生存率、赤血球、白血球、ヘモグロビン、リンパ球、血清総タンパク質などが分析されました。
また、カタッパ葉抽出液には、サポニン、トリテルペノイド、キノン、フェノール、タンニン、フラボノイドなどの植物化学成分が検出されたとされています。
研究では、375 ppm以上で生存率、赤血球、ヘモグロビンなどに良い影響が示唆されています。
このような血液指標の研究は、カタッパ葉抽出物が魚の体の状態にどのような影響を与えるかを考えるうえで参考になります。
ただし、ここでも大切なのは、家庭の水槽で自己流に濃度を上げるべきではないということです。研究では、決められた濃度で比較されています。
家庭では、商品ごとの使用方法を守り、水換えや観察と組み合わせることが大切です。
ちなみに、サカタのベタ ベタ発酵水は、このような研究結果に基づいて、カタッパの葉の含量で設計しており、使用目安で使えば、ベタに良いブラックウォーター環境を簡単に作ることができます。
カタッパの葉は「薬の代わり」ではない

ここは、この記事で最も大切なポイントです。
カタッパ葉抽出物には、抗菌性や血液指標、抵抗性に関する研究があります。
しかし、だからといって次のように言うことはできません。
- ブラックウォーターで病気が治る
- マジックリーフで尾ぐされ病が治る
- カタッパの葉で松かさ病を防げる
- ベタ発酵水を入れれば病気にならない
- 薬の代わりにブラックウォーターを使えばよい
これらは言いすぎです。
病気が疑われる時は、まず水質、水温、症状、餌食い、呼吸、泳ぎ方を確認する必要があります。
必要な場合は、症状に合った適切な治療を考える必要があります。
ブラックウォーターは、治療の代わりではありません。
むしろ、病気予防という言葉を使うなら、病気を直接防ぐものではなく、ベタに負担をかけにくい環境づくりをサポートするものと考えるのが安全です。
病気になりにくい環境づくりで大切なこと

ベタの病気対策で一番大切なのは、日々の基本管理です。
ブラックウォーターを使うかどうかに関係なく、次のようなことが重要です。
水質を悪化させない
餌の食べ残しやフンは、アンモニアの原因になります。
アンモニアや亜硝酸は、透明な水の中でも発生することがあります。
水がきれいに見えていても、ベタにとって安全とは限りません。
特に小型水槽では、水量が少ないため、少しの汚れでも水質が変わりやすくなります。
水温を安定させる
ベタは熱帯魚です。
急な水温変化は、ベタに負担をかけます。
低水温、高水温、昼夜の大きな温度差には注意が必要です。
水温が安定していることは、ベタの体力を保つうえでとても大切です。
ストレスを減らす
ベタは周囲の刺激に反応しやすい魚です。
強すぎる照明、ガラス面の反射、隣の魚への反応、強い水流、隠れ家のない環境などは、ベタが落ち着きにくい原因になります。
ブラックウォーターは、光や周囲の刺激をやわらげる環境づくりの一部として使えます。
導入直後の負担を減らす
ベタを迎え入れた直後は、環境が大きく変わります。
移動、温度変化、水質変化、明るさの変化などが重なる時期です。
この時期は、落ち着ける環境を作ることが大切です。
ブラックウォーター、隠れ家、背景、浮草などを組み合わせることで、ベタが落ち着きやすい環境を作りやすくなります。
ブラックウォーターを使う時に見ておきたいサイン



ブラックウォーターを使っている時も、日々の観察は欠かせません。
特に次のようなポイントを見ておきましょう。
- 餌を食べているか
- 泳ぎ方がいつも通りか
- ヒレを閉じていないか
- 呼吸が荒くないか
- 底でじっとし続けていないか
- 体表やヒレに白濁、赤み、傷がないか
- 水に異臭や白濁がないか
- 底に餌の残りやフンがたまりすぎていないか
ブラックウォーターは茶色い水なので、透明な水より底の汚れが見えにくいことがあります。
そのため、スポイトなどで底の汚れを確認しながら管理すると安心です。
また、病気が疑われる時にブラックウォーターだけで様子を見続けるのは危険です。
症状が進んでいる場合は、早めに水質や水温を確認し、必要に応じて適切な対応を考えましょう。
サカタのベタ ベタ発酵水について

サカタのベタでは、ベタのためのブラックウォーターづくりとして、サカタのベタ ベタ発酵水をご用意しています。
ベタ発酵水は、カタッパの葉を中心に、アカシア・カテチュー樹皮、ヤシの雄花、マンゴスチン皮、天然塩などを使ったティーバッグ式の商品です。
サカタのベタ ベタ発酵水は、ベタの水槽で使いやすい、適度な濃さのブラックウォーターを作りやすいように設計されています。
使い方は、ティーバッグを水に入れ、約2時間抽出してから使用します。
葉をそのまま水槽に入れる方法もありますが、ティーバッグ式には次のような使いやすさがあります。
- 抽出してから使える
- 水槽内に葉くずが散らばりにくい
- 小型水槽でも使いやすい
- 導入直後や水換え後にも使いやすい
- 適度なブラックウォーター環境を作りやすい
サカタのベタでは、ベタ発酵水を病気を治すための商品とは考えていません。
また、病気を完全に防ぐ商品とも考えていません。

ベタ発酵水は、あくまでベタが落ち着きやすく、体調を整えやすいブラックウォーター環境づくりをサポートする商品です。病気になってからではなく、病気になる前の予防としておすすめしています。
先ほどの研究例にあった、エロモナス菌を予防するために使う目的に合った、ベタに良いカタッパの葉の含量で商品設計しており、使用目安で使うことで、ベタに良いブラックウォーター環境を簡単に作ることができます。
また、水温管理、水換え、餌の量、日々の観察と組み合わせて使うことで、ベタにやさしい飼育環境づくりにつながります。
初心者が誤解しやすいポイント

抗菌性があるなら病気が治ると思ってしまう
カタッパ葉抽出物には、in vitroで抗菌性を調べた研究があります。
しかし、培地上で細菌の増殖を抑えることと、家庭水槽で病気が治ることは同じではありません。
抗菌性の研究は参考になりますが、治療効果を保証するものではありません。
病気予防として入れておけば安心と思ってしまう
ブラックウォーターを使っていても、水質が悪ければベタには負担になります。
餌の与えすぎ、水換え不足、底の汚れ、水温変化があれば、病気のリスクは高まります。
ブラックウォーターだけに頼らず、基本管理を続けることが大切です。
症状が出ているのにブラックウォーターだけで様子を見る
ヒレが溶けている、体が膨らんでいる、松かさのように鱗が立っている、呼吸が荒い、餌を食べない。
このような明らかな異常がある場合は、ブラックウォーターだけで解決しようとしない方が安全です。
まず水質と水温を確認し、症状に応じた対応を考えましょう。
まとめ:ブラックウォーターは病気を治すものではなく、病気になりにくい環境づくりの一部

カタッパの葉やブラックウォーターには、抗菌性、血液指標、生存率、Aeromonas hydrophilaへの抵抗性などに関する研究があります。
これらの研究は、カタッパの葉が観賞魚飼育で使われてきた理由を考えるうえで、とても参考になります。
ただし、家庭水槽で「病気が治る」「病気を防げる」と断定することはできません。
ブラックウォーターは薬ではありません。
水換えの代わりにもなりません。
大切なのは、ブラックウォーターをベタに負担をかけにくい環境づくりの一部として使うことです。
病気になりにくい環境を作るためには、次の基本が欠かせません。
- 水質を悪化させない
- アンモニアと亜硝酸に注意する
- 水温を安定させる
- 餌を与えすぎない
- 水流や明るさを調整する
- 毎日ベタの様子を見る
カタッパの葉やベタ発酵水は、こうした基本管理と組み合わせることで、ベタが落ち着きやすいブラックウォーター環境づくりをサポートしてくれます。
サカタのベタでは、これからも論文や研究をもとに、初心者の方にもわかりやすく、ベタにとって本当にやさしい飼育環境を考えていきます。
サカタのベタはベタ発酵水はこちら
参考動画
参考文献
- Chansue, N., & Assawawongkasem, N. (2008).
The in vitro Antibacterial Activity and Ornamental Fish Toxicity of the Water Extract of Indian Almond Leaves (Terminalia catappa Linn.).
KKU Veterinary Journal, 18(1), 36–45.
- Nugroho, R. A., Manurung, H., Nur, F. M., & Prahastika, W. (2017).
Terminalia catappa L. extract improves survival, hematological profile and resistance to Aeromonas hydrophila in Betta sp.
Fisheries & Aquatic Life, 25(2).
DOI: 10.1515/aopf-2017-0010 - Nugroho, R. A., Manurung, H., Saraswati, D., Ladyescha, D., & Nur, F. M. (2016).
The Effects of Terminalia catappa L. Leaves Extract on the Water Quality Properties, Survival and Blood Profile of Ornamental Fish (Betta sp) Cultured.
Biosaintifika: Journal of Biology & Biology Education, 8(2), 240–247.
DOI: 10.15294/biosaintifika.v8i2.6519 - Wang, X., et al. (2024).
Recent advances of Terminalia catappa and its application in fish culture: A review.
Reviews in Aquaculture.
DOI: 10.1111/raq.12920
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